サッカーW杯で乱入騒動も。プーチン政権に声を上げる者の正体
ほんとうのロシアとモスクワ③
■「プッシー・ライオット」に代表される、体制批判のムーブメント
2012年。「プッシー・ライオット」と呼ばれる“自称” パンクロック・グループが、モスクワのロシア正教会の救世主キリスト大聖堂に侵入し、プーチン大統領を批判する曲を演奏。メンバーの3人が投獄されたというニュースは日本のメディアでも報道された。
最近では、今夏にロシアで行われたサッカーワールドカップの決勝戦で、メンバーを入れ替えながらも活動を続けるプッシー・ライオットのメンバーが、ピッチに乱入するという騒動もあった。ここでは、ロシア警察の強権主義に対するプロテスト(抗議)のメッセージを伝える為、決勝戦のピッチに乱入したという。
21世紀のモスクワにはじまり、ロシア全体で広まっていった「クリエイティブ・プロテスト」という動き。投獄されたプッシー・ライオットの3人は、エカテリーナ・サムセビッチさん、マリア・アリョーヒナさん、ナジェージダ・トロコンニコワさんの、いずれも女性。プーチン批判と悲劇の投獄から、一躍「悲劇のヒロインたち」として、世界のメインストリームメディアに躍り出たプッシー・ライオットだが、この一連の騒動を地元モスクワで目撃した人たちは、「ただのメディア向けの大騒ぎ」と切り捨てる。生まれも育ちもモスクワ、生粋のモスクワっ子である、タティアナ・バトゥロヴァさん(実名)は、この一連の騒ぎについて、こう語った。
「プッシー・ライオットは、自分たちがパンクロック・ミュージシャンだと言ってますが、この人たちに音楽的な才能などまるでないという事は、直接パフォーマンスを観た人は皆知ってます。アーティストと自称することもあるらしいですが、奇妙な服装をして、神聖な場所で汚い言葉を発するような人たちに、芸術を語る資格などありません。どんな手を使ったにせよ、有名になれて良かったですね、というのが私の正直な感想です」
しかしながら、こうした「クリエイティブ・プロテスト」という動きが、2010年代前半に始まったという事実は、否定できない。2011年には、サンクトペテルブルクで、もはや笑うしかないというような、傑作的な「クリエイティブ・プロテスト」が行われた。